私は新卒看護師1年目から回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ病棟)で勤務しています。
新人のときは、1年目から回復期で働くことで、急性期で働いている同期と比べて知識面や技術面などで遅れをとってしまうんじゃないかと焦りや不安を感じていました。
やっぱり新人は急性期じゃないと・・・
1年目から回復期に行くと、急性期の知識や看護技術が身につかないんじゃないの?
回リハ病棟の仕事って実際どんな感じなの?
もし、就職先や転職先で回リハ病棟が気になっている人がこの記事を読んで、少しでも悩みや疑問を解決できれば嬉しいです。
回リハ病棟の特徴について
回復期リハビリテーション病棟とは?
回復期リハビリテーション病棟とは、
脳血管疾患または大腿骨頚部骨折などの病気で急性期を脱しても、まだ医学的・社会的・心理的なサポートが必要な患者さんに対して、多くの専門職種がチームを組んで集中的なリハビリテーションを実施し、心身ともに回復した状態で自宅や社会へ戻っていただくことを目的とした病棟。(厚生労働省によると)
つまり、急性期病院である程度の治療は終えたけど、在宅復帰するために機能回復やADLの向上を目指す患者さんたちが、集中的にリハビリテーションを行う場所だよ!
どんな患者さんが入院してくるのか?
回リハ病棟は厚生労働省が定めている対象の疾患や入院期間があります。
脳血管疾患だと150日、高次脳機能障害を伴うと180日、整形疾患や心疾患の場合は60日~90日。急性期だと14日~20日くらいで退院する患者さんが多いですよね。それに比べると長期間ですが、どんな患者さんでもだいたい期間内に退院していきます。
回リハ病棟には、総合病院の中の回リハ病棟と、リハビリ病院の回リハ病棟があります。総合病院の回リハ病棟であれば、同じ病院内の急性期病棟から対象患者さんが入棟してくることが多いと思いますが、リハビリ病院には急性期病院(総合病院)から転院という形で入院してきます。
回リハ病棟に入院するためには、急性期病院から送られてくる診療情報提供書や看護サマリーなどを元に医師や管理職看護師、ソーシャルワーカーなどが議論し入院の可否が決定します。
リハビリ病院には人工呼吸器や透析の設備がないことが多いから、人工呼吸器つけているような患者さんや透析が必要な患者さんが入院してくることはなかったよ!
総合病院の回リハ病棟であれば、その病院の設備にもよるけど、透析患者さんは入棟してくることがあったよ!
リハビリについて
回リハ病棟のリハビリは、厚生労働省により、1日最大9単位(1単位=20分)つまり3時間までと決められています。1回のリハビリ時間は、1時間を3回行う人もいれば、20分や40分など短く分けて行うなど、患者さんの状態に合わせてスケジュールを組んでおり、365日無休でリハビリを行います。
リハビリ訓練を実際に行うのは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士です。リハビリで訓練した動作を看護師が日常生活で見守りや介助を行うことでADL向上に繋がります。また看護補助者(介護士)と協力しレクリエーションを行ったり、看護リハを実施している病院もあります。
リハビリ訓練で身につけた「できるADL」を日常生活で実践することで「しているADL」に繋げていきます!
回リハ病棟の看護師について
看護師の1日の流れ
ナース専科さんの1日の流れがわかりやすかったのでお借りしました。日勤帯の勤務はこんな感じです。
朝、申し送りが終わったら、メンバーで陰部洗浄や更衣などの清潔ケアを行います。清潔ケアは自分の受け持ちだけ実施するのではなくて、手の空いている人がリハビリ時間の早い患者さんからどんどん回っていき、メンバーみんなで協力して行います。清潔ケアが終わり次第、受け持ち患者のバイタル測定や処置に回ります。バイタル測定は病院によってはリハビリスタッフが協力してくれるのでとても助かります。
午後はカンファレンスや委員会などがあります。午後はコール対応しながら、どんどん記録を進める!といった感じです。緊急入院はありませんが、センサーやコール対応が多く、時間があるときに記録を進めることがとても大事です。
日勤帯の受け持ち人数はその日のスタッフの人数にもよりますが、5人~13人程度です。急性期と違い、状態が安定している患者さんが多く状態もそこまで大きな変化はないので1人にかかる記録の時間が少ないです。そのため患者さんの急変がなければ定時で帰れることがほとんどです。
自分が入院担当であれば、受け持ち患者はつかない、もしくは自立の患者さん4人受け持つことが多かったです。入浴担当の日であればその日中入浴介助のため、受け持ち患者は持たないことが多かったです。(病院によるとは思いますが、、、)
看護師の業務内容
日常生活援助
回リハ病棟看護師の業務は主に日常生活援助です。
- トイレ介助
- 入浴介助
- 食事介助
- 移動や移乗の介助
患者さんの状態によって、歩行か車椅子か、見守りか軽介助か中介助か、など異なります。また、認知機能低下している患者さんもおり、センサー使用している患者さんも多くいます。患者さん1人1人介助量や介助方法が異なるため、患者さんの個別性に合わせた対応が必要です。
処置
入院患者さんによっては以下の処置が必要なことがあります。
- 経鼻経管栄養
- 胃瘻管理
- バルーン管理
- 導尿・残尿測定
- 褥瘡処置
- 採血・12誘導心電図・検査出し
- 点滴管理
- 気切管理・吸引
点滴管理するような患者さんの多くは、感染症(誤嚥性肺炎・尿路感染・コロナウイルス)や低栄養・脱水による治療のためです。回リハ病棟で行える治療には限りがあるため悪化するような患者さんは急性期病院へ転院されます。
回リハ病棟での「重傷患者」は、経管栄養で寝たきりだったり、気切管理が必要だったり、点滴管理が必要な患者さんを指すことが多いよ!
入退院業務
だいたい、退院患者さんが1人いたら入院患者さんも1人います。
入院時は検査・入院時病状説明・書類説明・情報収集・荷物整理・安静度の確認・入院オリエンテーション・カルテ入力など行います。入院患者さんが自立に近い人は入院業務がスムーズに終わりますが、患者さんによっては、センサーの設置や身体抑制の準備、ベッド環境の調整なども必要です。家族が熱心な方であれば家族対応に時間を要することもあります。
カンファレンス・リハビリ見学・家屋調査
回リハ病棟にはいくつかカンファレンスがあります。
- 入院時カンファレンス(入院から一週間以内に行う)
- 定期カンファレンス(入院1ヶ月毎に行い、患者さんの現状や目標を多職種で共有する)
- 身体拘束カンファレンス(身体拘束使用している現状や解除にむけて多職種で話し合う)
- 退院支援カンファレンス(退院支援や退院準備がどこまで進んでいるか共有)
- 退院前カンファレンス(ケアマネも含めて使用するサービスや退院後の生活について確認)
- 家族カンファレンス(家族へ現状説明や退院後の生活についての希望や目標を共有)
病院によってカンファレンスの名称や話し合う内容は多少違いますが、だいたいこんな感じです。また、家族にリハビリがどこまで進んでいるか確認してもらうためのリハビリ見学や、自宅退院の場合、自宅環境の把握や自宅退院に向けてどこまでADL獲得が必要かなど知るために実際に自宅へスタッフとともに訪問する家屋調査などがあるのも回リハ病棟の特徴です。(家屋調査はリハビリスタッフが同行することが多いです)
委員会・研修
回リハ病棟にも委員会が存在するため、委員会活動や院内研修への参加が必要なことがあります。最近はWEB研修が増えてきており、業務内の空いた時間で定められた研修動画を視聴するという形が増えてきているので、時間外研修は少なくなってきている印象です。
これは急性期病院と同じですね!
プライマリー制であれば、受け持ち患者さんの看護サマリーやカンファレンス資料の準備、家族指導なども必要になります!
回リハ病棟で働くメリット・デメリット
回リハ病棟で働くメリットやデメリットについて説明していきます!
回リハ病棟で働くメリット
- ワークライフバランスを重視できる
- 回リハ病棟は、予定入院・予定退院が多く緊急入院や手術がありません。そのため、患者さんの急変などがなければ定時で上がれることがほとんどです。また、患者さんの状態が安定していることが多く業務前の情報収集もそこまで時間がかかりません。出勤する時間も業務開始10分前程度のスタッフが多いです。そのため、自分の時間を大切にしたいという人や子育て世代で子供との時間や家族との時間を大切にしたいという人にはぴったりです。
- 患者さんに寄り添った看護ができ、回復する姿に元気をもらえる
- 急性期では緊急入院や手術、医療行為が多いです。さらに委員会や研修など業務に追われて、患者さん1人1人と向き合い、自分のやりたい看護ができないまま毎日過ごす事が多いのではないでしょうか。回リハ病棟は日常生活援助が基本となるため、患者さんと関われる時間はとても多いです。受け持ち患者さんのために自分に何ができるのかを考え行動に移すことができる余裕があります。自分のやりたい看護が行えることや仕事へのやりがいやモチベーションにも繋がってくるのでとても大切ですよね。 また、患者さんの多くは入院時よりもADL向上して退院していきます。毎日毎日リハビリを頑張って、安静度が上がり自立していく患者さんをみて、私たち看護師がその姿に励まされたり元気をもらったりすることがとても多いです。
- お給料は急性期病院とそこまで大きく変わらない
- 残業が少ない分、残業代は期待できません。しかし、基本給や夜勤手当や賞与などは急性期病院とほとんど変わらない印象があります。
ちなみに、私が5年目の時に働いていた病院は、基本給24万で夜勤手当が1回1万5千円、ボーナスは4ヶ月分もらっていたよ!夜勤回数は4回~7回くらいだったな。
回リハ病棟で働くデメリット
- 身体介助が多く体力的な負担につながる
- 回リハ病棟看護師の主な業務は日常生活援助です。「リハビリ病棟」ですから、患者さんはベッドから離床して過ごす時間が多いです。もちろん食事は毎食、食堂で摂取してもらいます。そのため(病床数にもよりますが)20人~40人程度の患者さんをベッドから離床させて食堂へ誘導する必要があります。また食事の前後やリハビリ前後にはトイレへ誘導したり、リハビリ以外の時間は離床してもらいレクリエーションを行うこともあります。また入浴に関しては全患者さん週3回以上目標にしている病棟が多いため、入浴介助も多く、やはり身体的な負担は急性期病棟よりも多いと言えるでしょう。
- 医療行為が少なくやりがいを感じられない
- 急性期病棟に比べて医療行為は少ないです。また手術や急変も少なく技術や知識などで、高い専門性を求めている看護師にとっては物足りなさを感じ、やりがいやモチベーションは得られにくいかもしれません。
私は看護師スキルよりも患者さんとの時間や自分の看護観を大切にしたかったから、回リハ病棟がとても働きやすくて、やりがいやモチベーションを感じているよ!
でも確かに、介助することが多いから体力は必要だね!笑
回リハ病棟に向いている看護師
回リハ病棟の特徴を踏まえて、回リハ病棟で働くことが向いている人はこんな感じ。
- ワークライフバランスを重視したい、できるだけ前残業や残業を減らしたい人
- 高度な専門性や看護スキルよりも患者さんとの関わりや患者さんとの時間を大切にしたい人
- 医療行為が苦手だけど、人との関わりは好きな人
- 病棟未経験やブランクがあり、病棟で働きたいけどすぐに急性期病棟で働くには不安な人
- 急性期での治療を終えた患者さんがどのように回復していくか気になる人
- 人をサポートしたり、支えることが好きな人
みんなで協力して定時で帰ろー!って気持ちが強い人たちが多いから、
自分の時間を大切にしたい人は回リハ病棟も検討してみてね!
実際に新人から回リハ病棟で働いてみて
私も実際に看護師1年目から回リハ病棟で働いてみて、はじめは「急性期からでなくていいのかな」「看護師スキル、技術や知識が身につくのかな」と不安をたくさん感じていました。しかし、回リハ病棟でも基本的な医療処置はあり、ちゃんと一から指導してくれるのである程度の知識は身につけることができます。脳血管疾患や整形疾患、循環器疾患についても自己学習したことと実際の患者さんを観察し知識を深めることができます。
また、急性期で働いていた同期は情報収集のために朝1時間前に出勤したり、毎日残業が当たり前の生活でした。緊急入院や手術も多く心身ともに疲れ切ってやめていく同期たちを多くみていたため、自分の時間を大切にしながら働けることのありがたさを感じながら、しかも回復期リハビリという分野でやりがいを自分なりにみつけて、今でもこうやって楽しく働けているので、自分はやっぱり回リハ病棟でよかったんだと常に感じています。
これからも回リハ病棟の魅力なども含めて発信していきたいと思います。最後まで読んでくれてありがとうございました。 ゆか子
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